日本人の心のスポ−ツではないか? 何が日本人を引き付けるのか?
世界中どの国にも,道具(武器)を持たずに裸で戦う相撲=レスリングはあります。人間の戦う本能でしょう。しかし,丸い円を描いて,相手をその外に押し出す事によって勝利する相撲は日本独自の物ではないでしょうか? 土俵の直径も江戸時代は13尺(3m94cm)でしたが,1931年(昭和6年)の天覧相撲から現在の15尺(4m55cm)になりました。一度だけ16尺にしましたが,現在の15尺に戻りました。昨今,体格の大幅な向上から15尺を大きくする案が出ましたが,相撲の醍醐味を失うとの意見から立ち消えとなりました。何故13尺から15尺にしたのか? 又15尺の言われはわかりません。知っている人がいたら教えてください。
他の競技は全て相手をねじ伏せる事によって勝利するスポ−ツです。勿論,日本の相撲にも相手を投げ,ねじ伏せるという事での勝利もあります。しかし,原点は押し出しです。この単純な円からの押し出すという事から,単純でない色々な技術,精神力が生まれるのではないか。これが日本人に受ける一つの理由ではないか。
私は生まれながらにして,相撲が好きでした。残念ながら大学ではじめました。少しは自信が有りました。しかし,高校チャンピオンの野村と相撲して,なんて強いのかと思いました。その野村が中尾先輩に勝てない。その中尾先輩がプロの春日野部屋の幕内に勝てない。その幕内が役力士に勝てない。その役力士が横綱に勝てない。横綱て,どんなに強いのか? と思いました。我々はプロの相撲取りではありません。長い人生の一時期を相撲と言うスポ−ツで身体と,精神を鍛えるのです。プロを目指す人は別です。実社会に出て,体力がなければ幾ら優秀な頭脳でも,期待に添えません。ノ−ベル賞は別です。しかし,ノ−ベル賞も取るまでの研究期間は体力でしょう。どうか,学生の皆さんは身体と精神を鍛えて下さい。そして,社会人として,さすが慶応相撲部出身と言わせて下さい。
立会いの1〜2秒で勝負が決まる競技。重量とスピ−ドを掛けたものが破壊力と言われ,悪戯に重量を付ける最近の傾向,塾の学生はどうかスピ−ドと技術を重視して下さい。立会いの一瞬の前さばき,まわしを取られた時のきり方,差し手の返し方,おっつけ,土俵際での腰の落とし方,スリ足等々単純に見える競技の中での一瞬の技術です。考えて出来る事ではなく,練習の結果,身体で反応するものでしょう。心・技・体です。しかし,全てがスポ−ツ力学に合ったものです。
日本の将来は皆様の双肩に掛かっています。私は仕事柄,世界を歩き回っています。体力です。そして,日本人としての誇りと,自信を持って,その上に塾出身の誇りを持って下さい。相撲はやっていて良い運動です。